CT・MRIの共同利用とは?保有医療機関が知っておきたい経営メリットと制度のポイント【2026年版】
CTやMRIを導入したものの、
「思ったほど検査件数が増えていない」
「空いている時間帯が多い」
「維持費や保守費の負担が大きい」
と感じている医療機関も少なくありません。
CT・MRIは、導入後も減価償却費、保守費、人件費など、多くの固定費が発生する医療機器です。
そのため、すでに保有しているCT・MRIの空き時間を他の医療機関からの検査依頼に活用する「医療機器の共同利用」は、設備をより有効に活用する方法の一つとして注目されています。
さらに現在は、国の医療政策においても高額医療機器の効率的な配置・共同利用が進められています。
本記事では、CT・MRIを保有する病院・クリニック向けに、
- CT・MRI共同利用とは何か
- なぜ経営改善につながる可能性があるのか
- 2026年度診療報酬改定との関係
- 共同利用を始める際の実務上のポイント
を分かりやすく解説します。
CT・MRIの「共同利用」とは?
CT・MRIの共同利用とは、CTやMRIを保有していない医療機関などから検査依頼を受け、自院の画像診断装置を利用して撮影を行う仕組みです。
例えば、近隣のクリニックでCT検査が必要になった場合、
依頼元クリニック
↓
CTを保有する医療機関へ検査を依頼
↓
患者さんが検査施設を受診
↓
CT撮影
↓
画像・読影結果を依頼元へ共有
↓
依頼元で診療に活用
という流れになります。
これまでも地域医療の中では行われてきた仕組みですが、近年はクラウドによる画像共有や遠隔読影の普及によって、より運用しやすい環境が整いつつあります。
なぜ今、CT・MRIの共同利用が注目されているのか
大きな理由の一つが、高額医療機器を地域全体で効率的に活用する必要性が高まっていることです。
日本は、人口当たりのCT・MRI保有台数が国際的にも非常に多い国です。
一方で、装置1台あたりの検査件数を見ると、海外と比較して必ずしも高いとはいえません。
つまり、
「医療機器は多く存在している一方、十分に活用されていない設備も存在する」
という状況があります。
特にCT・MRIは導入費用が高額で、保有しているだけでもさまざまなコストが発生します。
そこで国も、医療機器を各医療機関が個別に保有するだけではなく、地域の医療資源として共同利用する方向を推進しています。
共同利用による経営上のメリット
1.すでに保有しているCT・MRIの空き枠を活用できる
CT・MRIでは、装置を使用していない時間帯であっても、
- 減価償却費
- 保守費用
- 設置スペース
- 放射線技師などの人件費
- 電気代
などのコストが発生します。
つまり、検査件数が少なくても一定の固定費がかかります。
そのため、空いている検査枠に他院からの検査を受け入れることができれば、すでに存在している設備・人員を活用しながら検査件数を増やせる可能性があります。
例えば、
午前中は自院患者の検査が多いものの、午後になるとCTが空いている。
このような医療機関であれば、午後の時間帯だけ近隣クリニックからの検査を受け入れる、といった運用も考えられます。
2.CT・MRIは「稼働率」が経営に大きく影響する
CT・MRIは典型的な固定費型の設備です。
例えばCTの場合、
装置購入費
+
保守費
+
人件費
+
電気代等
が継続的に発生します。
そのため、
1日1件しか撮影しないCT
と、
1日5件撮影するCT
では、装置1件当たりの固定費負担が大きく異なります。
特に一定の検査件数を超えた後は、新しい検査を1件追加する際に発生する費用が比較的小さいケースもあります。
もちろん、造影剤、消耗品、人員配置などの追加コストは考慮する必要があります。
それでも、
「すでに所有している装置の空き枠をどう活用するか」
という視点は、CT・MRIの経営を考える上で重要です。
3.診療報酬上も共同利用を意識した制度がある
CT・MRIの共同利用については、診療報酬上にも関連する仕組みがあります。
2026年度診療報酬改定では、CT・MRIについて以下のような変更が行われています。
128列以上CT
128列以上のマルチスライスCTについて新しい区分が設けられ、
共同利用施設:1,120点
その他:1,100点
となっています。
64列以上128列未満CT
共同利用施設:1,020点
その他:1,000点
となっています。
3テスラ以上MRI
共同利用施設:1,720点
その他:1,700点
となっています。
一定の高性能CT・MRIについては、共同利用施設として施設基準を満たすことで、共同利用を前提とした評価が設けられています。
※実際の算定・施設基準については、最新の厚生労働省通知および地方厚生局への確認が必要です。
「共同利用施設」には施設基準がある
共同利用施設として診療報酬上の評価を受けるためには、単に他院から数件検査を受ければよいというわけではありません。
一定の機器については、
他医療機関からの依頼による撮影が、対象機器の使用症例数の10%以上
といった施設共同利用率の基準があります。
そのため、
「届出をしてから紹介先を探す」
のではなく、
継続的に検査を依頼してくれる地域医療機関との連携体制を先につくること
が重要になります。
国も高額医療機器の共同利用を推進
医療機器の共同利用は、単なる医療機関同士のビジネス上の取り組みではありません。
国の医療政策としても推進されています。
2020年度以降、CT・MRIなどの対象医療機器を新規購入・更新する場合には、地域によって共同利用計画の作成・提出が求められています。
対象となる主な機器は、
- CT
- MRI
- PET・PET-CT
- 放射線治療装置
- マンモグラフィ
です。
背景にあるのは、
人口減少が進む中で、高額な医療機器を地域全体で効率的に活用していく
という考え方です。
2027年度以降に進められる新たな地域医療構想でも、医療機関同士の連携や医療資源の効率的な配置は重要なテーマとなっています。
今後、CT・MRIは
「自院だけの設備」から「地域で活用する医療資源」へ
という考え方がより重要になっていく可能性があります。
共同利用には「検査件数以外」のメリットもある
共同利用のメリットは、単純な検査件数の増加だけではありません。
近隣医療機関と検査連携を行うことで、地域医療連携の接点が増えます。
例えば、
- CT・MRI検査の依頼
- 専門外来への患者紹介
- 精密検査
- 入院・手術が必要な患者の紹介
- 定期的な医療機関同士の情報交換
などにつながる可能性があります。
特に病院では、共同利用をきっかけとして地域の診療所との関係を構築することで、紹介患者の増加につながるケースも考えられます。
そのため共同利用は、
「CT・MRIの稼働率向上」だけでなく、「地域医療連携の入口」
として考えることもできます。
一方で、共同利用には実務上の課題もある
メリットのある共同利用ですが、実際に始めようとするとさまざまな運用課題が発生します。
代表的なのが、
予約調整
「いつ検査できるのか」を依頼元と受託側で調整する必要があります。
患者情報の共有
患者基本情報、検査目的、紹介状、造影検査に必要な情報などを正確に共有する必要があります。
画像データの受け渡し
現在でも、
- CD-R
- DVD
- 患者さんによる持参
- 郵送
などが利用されているケースがあります。
読影体制
撮影はできても、
「誰が画像を読影するのか」
という問題があります。
特に放射線科専門医が常勤していない施設では、CT・MRI検査件数を増やしたくても、読影体制がボトルネックになる場合があります。
読影レポートの返却
画像だけでなく、読影結果をどのように依頼元へ返却するのかも決める必要があります。
CD-R中心の運用からクラウド型の共同利用へ
従来の共同利用では、
検査予約
↓
患者来院
↓
撮影
↓
CD-R作成
↓
患者へ渡す・郵送
↓
依頼元で取り込み
↓
読影結果を郵送
という運用も珍しくありませんでした。
この方法では、共同利用件数が増えるほど事務作業も増加します。
そこで現在では、医療画像をクラウド上で共有する仕組みを利用する方法もあります。
例えば、
依頼
↓
検査予約
↓
CT・MRI撮影
↓
画像をクラウドへ共有
↓
遠隔読影
↓
レポート作成
↓
依頼元がオンラインで確認
という運用です。
クラウドを利用することで、CD-Rの作成や郵送といった業務を減らしながら、画像やレポートを共有できる可能性があります。
2026年度改定では遠隔読影にも新しい動き
2026年度診療報酬改定では、遠隔画像診断に関連して、
「画像診断管理加算2(一部委託を行う場合)」166点
が新設されました。
一定の条件を満たした医療機関では、画像診断の一部を外部へ委託しながら画像診断管理加算を算定できる仕組みです。
これまで、
「CT・MRIを増やしたいが読影医が足りない」
という問題を抱えていた施設にとって、遠隔読影を活用できる選択肢が広がっています。
もちろん、実際の算定には送信側・受信側双方の施設基準などの条件があります。
共同利用と遠隔読影を組み合わせる場合には、
撮影体制
+
画像共有
+
読影体制
を一体として設計することが重要です。
CT・MRI共同利用を始めるなら、まず確認したい5つのポイント
いきなり近隣医療機関へ営業するのではなく、まず自院の状況を整理することが重要です。
1.現在の稼働率を調べる
曜日・時間帯別に、
「どの時間にCT・MRIが空いているか」
を確認します。
2.受け入れ可能件数を決める
例えば、
「火曜日・木曜日の14時〜17時は最大3件」
など、実際に提供できる枠を設定します。
3.近隣の依頼候補施設を整理する
特に、
- CTを保有していないクリニック
- MRIを保有していないクリニック
- 整形外科
- 脳神経外科
- 内科
- 泌尿器科
- 消化器内科
などは、画像検査が必要になる可能性があります。
4.読影体制を決める
自院読影なのか、遠隔読影を利用するのかを決めます。
5.予約・画像共有・レポート返却方法を決める
共同利用を増やすためには、
依頼する側にとって使いやすいこと
も非常に重要です。
「電話しなければ予約できない」
「画像はCD-Rが届くまで確認できない」
「読影結果がいつ届くか分からない」
という状態では、依頼元の負担が大きくなります。
「CT・MRIを持つ」から「地域で活かす」へ
CT・MRIは高額な医療機器です。
しかし、購入しただけではその価値を十分に発揮することはできません。
重要なのは、
その装置をどれだけ地域医療の中で活用できているか
という視点です。
自院の検査件数だけでは十分な稼働率を確保できない場合でも、近隣の医療機関から検査を受け入れることで、設備をより有効に活用できる可能性があります。
そして共同利用を成功させるためには、
- 空き枠の把握
- 地域医療機関との連携
- 予約管理
- 患者情報共有
- 画像共有
- 読影
- レポート返却
までを、一連の業務として設計することが重要です。
これからのCT・MRI経営では、
「自院だけで何件撮影するか」ではなく、「地域全体の検査需要をどれだけ取り込めるか」
という視点が、これまで以上に重要になってくると考えられます。
ScanShareでCT・MRI共同利用をよりスムーズに
ScanShareでは、医療機関同士のCT・MRI共同利用に必要となる画像共有や遠隔読影などを、クラウド上で支援しています。
共同利用では、単に検査を受け入れるだけではなく、
依頼 → 撮影 → 画像共有 → 読影 → レポート確認
までの運用をいかに簡単にするかが重要です。
「CT・MRIの空き枠を活用したい」
「近隣クリニックから検査を受け入れたい」
「共同利用を始めたいが、運用方法が分からない」
といった医療機関は、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年度診療報酬改定および公表されている各種資料をもとに一般的な制度・運用について整理したものです。実際の施設基準、届出、診療報酬算定、契約方法等については、厚生労働省、地方厚生局、都道府県等の最新情報をご確認ください。また、共同利用による収益効果は機器、稼働状況、契約条件、検査件数等によって異なります。