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CT導入で医療経営はどう変わる?収益改善につなげるための5つの視点

「CTを導入すれば、検査収入が増えて経営が安定する」

確かに、CTは医療機関に新たな収益機会をもたらす設備です。しかし、導入するだけで経営が改善するわけではありません。

重要なのは、CTを単なる検査機器として考えるのではなく、診療の質、患者導線、地域連携、収益構造を改善するための経営資源として活用することです。

本記事では、CT導入によって期待できる経営上の効果と、導入前に確認しておきたいポイントを解説します。

CT導入は「検査収入を増やすだけ」の投資ではない

CT導入の効果として最初に挙げられるのは、画像検査による収益です。

ただし、医療経営の観点では、撮影料だけで導入効果を判断するのは十分ではありません。CT導入によって生まれる価値は、大きく次の5つに分けられます。

  1. 院内で実施できる検査の増加
  2. 診断から治療までの時間短縮
  3. 他院へ紹介していた患者の院内完結
  4. 新たな患者層や疾患への対応
  5. 近隣医療機関からの検査受け入れ

つまり、CT導入は「検査部門の売上を増やす施策」であると同時に、医療機関全体の診療機能を高める施策でもあります。

1.院内完結率を高め、患者の負担を軽減できる

CTを保有していない医療機関では、詳しい画像検査が必要になった患者を、病院や画像診断施設へ紹介しなければなりません。

患者は別の医療機関を予約し、検査を受け、結果を持って再び受診する必要があります。受診回数が増えるだけでなく、診断や治療方針の決定までに時間がかかることもあります。

院内にCTがあれば、医学的に必要な患者に対して、診察から検査、結果説明、治療方針の決定までを自院で進めやすくなります。

これは患者の利便性を高めるだけではありません。

他院で検査を受けた後に患者が戻ってこない、診断までの期間に受診が中断してしまうといった機会損失を抑え、継続的な診療につなげやすくなります。

2.対応できる疾患と診療の幅が広がる

CTを導入すると、単純X線検査や超音波検査だけでは判断が難しかった症例にも対応しやすくなります。

診療科や装置の性能、撮影体制によって異なりますが、CTは次のような領域で活用できます。

  • 胸部・腹部疾患の精査
  • 肺炎や肺腫瘤などの評価
  • 尿路結石や腎・尿路疾患の確認
  • 頭部外傷や脳血管疾患が疑われる場合の評価
  • 整形外科領域における骨折や骨病変の確認
  • 健診・人間ドック後の二次検査
  • がんの早期発見や治療後の経過観察

対応できる疾患が広がれば、これまで他院へ紹介していた患者を自院で診療できる可能性も高まります。

CT導入を検討する際には、「何件撮影できるか」だけでなく、「どの患者層を新たに受け入れられるか」「どの診療を院内で完結できるか」まで考えることが重要です。

3.診断の迅速化が医療機関の選ばれる理由になる

患者が医療機関を選ぶ際には、立地や診療時間だけでなく、必要な検査を受けられるか、結果を早く確認できるかも重要な判断材料になります。

CTを院内に設置し、撮影後の画像確認や読影まで円滑に行える体制を整えることで、早期の診断と治療方針の決定につなげられます。

特に、健診で異常を指摘された患者や、がん・結石・肺疾患などに不安を抱える患者にとって、「検査のために別の病院へ行かなくてよい」という点は大きな安心材料です。

CT導入は、設備そのものを訴求するのではなく、次のような患者価値に置き換えて発信する必要があります。

  • 必要な検査を院内で受けられる
  • 診断までの移動や待ち時間を減らせる
  • 検査後の説明をスムーズに受けられる
  • 継続して同じ医療機関に相談できる

「CT完備」という設備情報だけではなく、患者にとって何が変わるのかを伝えることが、集患につなげるポイントです。

4.共同利用により、自院患者以外の検査も受け入れられる

CTの空き時間を近隣医療機関に開放し、検査を受託する「共同利用」も、稼働率を高める方法の一つです。

近隣のクリニックには、CTを必要とする患者がいても、自院では撮影できない施設があります。こうした医療機関から検査依頼を受け入れることで、地域の検査拠点としての役割を担えます。

厚生労働省も、CTやMRIなどの高額医療機器について、地域での配置状況や稼働状況を可視化し、効率的に活用する考え方を示しています。新たに高額医療機器を購入する医療機関については、地域の状況に応じて共同利用計画の作成や協議が必要になる場合があります。厚生労働省「外来医療の提供体制について」

共同利用を行う場合には、単に「検査を受け付けます」と案内するだけでは十分ではありません。

  • 予約枠の公開
  • 検査依頼情報の受け渡し
  • 患者への案内
  • 撮影画像の共有
  • 読影レポートの返却
  • 依頼元医療機関への連絡
  • 請求や精算の管理

こうした運用を事前に設計する必要があります。

予約、画像、読影結果の共有をデジタル化できれば、電話、FAX、CD-ROM、紙レポートに依存した運用を減らし、共同利用を継続しやすくなります。

5.CT導入の採算は「1件当たりの売上」だけでは判断できない

CT導入の収支を考える際は、撮影料に検査件数を掛けるだけでは不十分です。

導入後には、次のような費用が発生します。

初期費用

  • CT本体の購入費またはリース契約
  • 撮影室の改修・放射線防護工事
  • 電源・空調設備
  • 搬入・設置費用
  • PACSや画像閲覧環境の整備
  • 造影検査を行う場合の関連設備

継続費用

  • リース料または減価償却費
  • 保守契約費
  • 診療放射線技師などの人件費
  • 電気代
  • 管球交換などの修繕費
  • 画像保存・システム利用料
  • 遠隔読影費
  • 造影剤や医療材料費
  • 安全管理・職員研修に伴う費用

厚生労働省の指針でも、CT装置について機種別の保守点検計画を策定し、適切に点検を行うことが求められています。厚生労働省「医療機関における放射線関連機器等の保守点検指針」

そのため、採算性は次のように段階を分けて計算します。

月間検査件数
= 1日当たりの検査件数 × 月間診療日数

月間限界利益
= CT検査による収入 − 検査件数に応じて増える費用

CT部門の月間収支
= 月間限界利益 − リース料・保守費・人件費・システム費などの固定費

さらに、CTによって院内に残る再診、治療、経過観察、健診後の精査なども含めて、医療機関全体への効果を確認する必要があります。

CT導入前に確認すべき7つの項目

CT導入を経営改善につなげるためには、少なくとも次の項目を事前に確認しておく必要があります。

1.現在、何件の患者を他院へ紹介しているか

過去6か月から1年間の紹介実績を確認し、CTがあれば院内で対応できた症例を抽出します。

2.どの疾患・診療科で利用するか

自院の患者構成と地域の医療需要を踏まえ、主な撮影対象を明確にします。

3.1日何件で損益分岐点を超えるか

楽観的な目標ではなく、現在の患者数を基準に、慎重・標準・成長の3パターンで試算します。

4.撮影を担当する人員を確保できるか

装置を導入しても、撮影できる人員や運用時間が不足すれば稼働率は上がりません。採用だけでなく、常勤・非常勤・業務支援など複数の選択肢を検討します。

5.誰が画像を読影するか

撮影後の画像を適切に評価し、診療へ反映できる体制が必要です。院内での読影が難しい場合は、放射線科専門医による遠隔読影を組み合わせる方法があります。

6.近隣医療機関から検査を受け入れられるか

自院患者だけでは十分な件数を確保できない場合、共同利用を前提に地域の医療機関へヒアリングを行います。

7.CT導入後の集患施策を用意できているか

ホームページ、疾患ページ、Web広告、院内掲示、紹介元への案内など、導入後の情報発信まで計画します。

経営改善につながるCT導入の考え方

CT導入を成功させるために必要なのは、高性能な装置を選ぶことだけではありません。

重要なのは、導入前に次の流れを設計することです。

対象患者の明確化
→ 必要な検査件数の試算
→ 撮影・読影体制の構築
→ 院内の診療導線整備
→ 地域医療機関への案内
→ 稼働率と収支の継続的な確認

CTは、導入した時点で経営を改善する設備ではありません。

患者が適切なタイミングで検査を受け、医師が速やかに画像と読影結果を確認し、診断や治療へつなげられる仕組みが整って初めて、経営上の価値を発揮します。

CTを「保有する設備」から「地域で活かす医療資源」へ

CT導入による経営改善の鍵は、自院の検査件数だけに依存しないことです。

院内診療に活用しながら、空き枠を近隣医療機関へ開放し、撮影画像や読影結果を円滑に共有できれば、CTは地域全体で活用できる医療資源になります。

ScanShareでは、医療機関同士のCT・MRI共同利用と遠隔読影を支援しています。

検査依頼、画像共有、読影レポートの確認までをクラウド上でつなぐことで、CT導入後の運用負担を抑えながら、院内利用と地域連携の両面から稼働率向上を支援します。

CTの新規導入をご検討の医療機関は、装置を選定する前に、必要検査件数、運用体制、共同利用の可能性を含めた導入計画をご相談ください。

※診療報酬、施設基準、届出、安全管理体制などは、装置の仕様や医療機関の状況によって異なります。導入時には、最新の通知および管轄機関、専門事業者への確認が必要です。

お問い合わせ・ご相談はこちら
【HP】https://smic-inc.jp/
【mail】support@smic-inc.com

代表兼執筆者プロフィール

画像

医療法人社団 慈水会 理事長
株式会社SMIC 代表
清水 勧一朗

放射線診断専門医として、大学病院・労災病院などで画像診断、放射線科診療、IVR領域に従事。
東京慈恵会医科大学附属柏病院では、放射線部 診療副部長を務め、画像診断・院内連携・診療体制の整備に携わってきました。

2024年より医療法人社団ゆりな会 理事、同年11月より医療法人社団慈水会 理事長に就任。
医療現場での画像共有・読影依頼・診療連携における実務上の課題を踏まえ、医療機関がよりスムーズに遠隔読影を導入できる仕組みづくりに取り組んでいます。

主な経歴

1997年4月
東京慈恵会医科大学 医学部 医学科 入学

2005年4月
東京慈恵会医科大学附属病院 放射線医学講座 医員

2006年4月
東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線部 診療医員

2008年6月
放射線診断専門医

2009年1月
独立行政法人 労働者健康安全機構 東京労災病院 放射線科

2010年1月
東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線部

2012年11月
日本IVR学会専門医

2023年4月
東京慈恵会医科大学附属柏病院 総合診療内科

2024年4月
東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線部 診療副部長
東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線部 退職
国際医療福祉大学院 修士課程 医療福祉経営専攻 入学
医療法人社団 ゆりな会 理事就任

2024年11月
医療法人社団 慈水会 理事長就任